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2007年8月の3件の記事

名所の名称

なんとなくネットのニュースを眺めていて、「フィンランド」の文字が目に入ったので読んでみたら、それは「ラリー」の話題でした。自動車レースですね。
申し訳ありませんがわたし、ラリーも、自動車そのものも、さっっっっぱりわかりません。すみません。フィンランドが「ラリー」や「F1」で強いことは知っていますが、ドライバーの名前も顔も知らないし、自動車レースってどういうルールかとか、まっっったくわかりません。

と、ともかく、フィンランドでなんか大きな「ラリー」の大会が開かれていたんですね。
で。
その記事には、「名所オーニンポーヤ」という記述があったのですが、「オーニンポーヤ」……?

おーにんぽーや??

……って、ナニ???
な、なんの名所???
それ、地名? フィンランドの??
フィンランド語には見えないんだけど???

その記事はラリーファン向けで、シロウト向けの説明もありません。
なんのことかわからず、頭の中はハテナマークでいっぱいに。

おーにんぽーや……

おーにん……の乱? 1467年?
にんぽー……木の葉隠れ?
ぽーや……だからさ? あ、「坊や」じゃなくて「ぽーや」か。「PO」。
(↑誰のセリフかわかんない人は無視してね汗)

すっかり混乱してしまった。
め、名所といってるんだからやはり地名でしょうか。記事を読む限りでは、なんか「ジャンプ台」(車がジャンプする)があるとかなんとか。

気を落ち着けて、もしフィンランド語なら本来どんな発音/綴りになりそうかアタリをつけ、フィンランド語Googleですこし調べたら、わかりました。
それはやはり場所の名前で、綴りは:

OUNINPOHJA

なーーんだそうか、わはははは。
こ、これじゃわからないよ~ははは。
これ、わたしなら「オウニンポホヤ」と書きますかね。「オウニンポフヤ」、でもいいけど。

フィンランド語の綴りと発音のことをいうと、

・POH の部分の「H」は、「Oを伸ばす」という意味ではないです(Hは、「ホ」「フ」等と書いたけど、無声音)。Oを伸ばしたければ、そのまんま OO と書きます。

・OU は、 OO とは違う発音です。
例:Ouluオウル(地名) / Espooエスポー(地名)
オウルはオールではないし、エスポーはエスポウではないんですね。
(カタカナで書くとちょっと意味不明ですが汗)

繰り返しになっちゃいますが、OU と OO はフィンランド語では違う音です。
日本語だと、「おうさま(王様)」と書いて口では「おーさま」といってるので、この点スルーしがちかもしれません。(ちなみに、フィンランド語の U の音が意外と難しいことは以前の記事で書きました→こちら

上に書いた日本語、

おうにん(応仁)
にんぽう(忍法)
ぼうや(坊や)

これらも全部、口では、おーにん、にんぽー、ぼーや っていってますよね。

まあややこしいことはいいんですが。
ラリーにお詳しいかたにお願い。ラリーを知らないけどフィンランド語は知ってるってひとが、「オーニンポーヤ」を理解しなくても、怪訝に思わないでくださいね~。このカタカナ、やっぱフィンランド語らしく見えない/聞こえないし、そこから即座に「OUNINPOHJA」という綴りをはじきだすのは難しいです。

えと、オウニンポホヤと書くべきだ、とかいうつもりはまったくありません~。ラリーの世界ではオーニンポーヤで通っているんでしょう。
ググってみたら、「オーニンポーヤ」よりも「オウニンポウヤ」という表記のほうがたくさんヒットします。が、日本人が普通に読めばオウもポウも「オー」「ポー」と母音を伸ばした発音になるでしょうから、音としては日本ではやはり「おーにんぽーや」と呼ばれてるってことなのかなと思います。
あ、オーニンポーヤって、最後の JAが「ジャ」でなくちゃんと「ヤ」になってるのはよかったです(よかった、ってのも変ですが)。

もしOUNINPOHJAの名を日本語で書く必要が出てきたとき、カタカナではどう書くのが一般的か、注意して調べないといけません、ということですよね。OUNINPOHJAという綴りは、フィンランド語ができる人ならだれでも読めますが、それを日本のラリーファンにわかるように「オーニンポーヤ」「オウニンポウヤ」と書くってのは、語学そのものとはまた別な能力かと。

「おーにんぽーや」が何なのかわかって、たいへん勉強になりました。

(2007.8.6 by mf)

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栄えある賞、その名は

書こうと思っててすっかり忘れてたんですが。

2007年6月にフィンランドで、「前年に出版された日本のまんがのフィンランド語訳で、とくにすぐれた作品の出版元に贈られる賞」の発表があり、受賞したのは Sangatsu Manga、対象作品は "Emma" でした。この賞、今回が第1回です。
”Emma”の原書(というのか?まんがでも)は、「エマ」(森薫・作)です。わたし未読なんですがビクトリア朝の英国を舞台にしたメイドさんの話なのね(この設定聞くとわたしなんかはすぐ「バジル氏」を連想するんだけど~)。「エマ」、前から読んでみたいとおもってるんですけどね~。だれか貸して。日本語版でもフィン語版でも。

それはいいんですが、その賞の名前というのが

OTAKU-PALKINTO
(オタク・パルキント)

パルキントは「賞」ですから、「オタク賞」、あまりにもそのままな名称です。その直球勝負ぶりには、すがすがしささえ覚えますね~。

Sangatsu Mangaのサイトはこちら

「オタク賞」主催 Otaku-lehti のサイトはこちら
(Otaku という名のファンジンを発行してるそうです)

Sangatsu Mangaは大手出版社 Tammi (タンミ)の関連会社みたいですが、Tammi 本体のサイトにも「オタク賞受賞」のニュースがちゃんと載ってます
日本語で、「オタク賞」というのは公式な賞の名前としてアリでしょうか?
さまざまな言語における、otaku という単語のニュアンスをしらべたら、おもしろいかもしれません。

(2007.8.4 by mf)

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ムーミンパパは電気うなぎの夢を見るか(題名は本文と関係ありません)

気づいたらもう8月だ。ブログを長いことほったらかしにしてしまいました。
まあ7月はフィンランドも夏休み強化月間につき基本的に

だ~れもいない@あらゆる職場

で、問い合わせとかしても無反応だったりするしね、まあいいか。

日本はといえば、関東地方はやっと梅雨明けしたとこです。
でも暦の上の夏はどんどん進行していて、今週の月曜日(7/30)は土用の丑の日でした。
この「土用」ということばは、ムーミンの原作(の邦訳)にも出てきます。

(以下引用)
 土用のおわりころの木曜日のことでした。ムーミントロールが、パパがハンモックをつる木の右手にある赤っちゃけた池で、小さいりゅうをつかまえたんです。
(引用終わり)
(短編「世界でいちばんさいごのりゅう」の冒頭部分。山室静訳、『ムーミン谷の仲間たち』所収)

わたしがムーミンの原作本にもっともイカれていたのは年齢がひとけたのころでしたが、この冒頭の一文には本を開くたびに衝撃を感じていました。だって不思議だったんだもん。

ムーミン谷にも、土用の丑の日があるのか?
ムーミン一家は、うな重の出前でもとるのか?
そもそも、この遠い異国(というか異世界)の物語で、土用っていったいどーゆーこと?

ま、よく読めば、書いてあるのは「土用」ってだけで、「丑の日」とはいってないんですがね。
(よく読まなくてもそうだろう)
だけどこの作品には、スナフキンが川で釣りをしていて「うなぎ」をつりあげるシーンがあるので、ますます混乱するわけです。
あーやっぱり土用の丑の日だからうなぎ? スナフキンはムーミン谷専属のうなぎ職人? って←ちがいます

ここで「土用」と訳されている単語は、フィンランド語では

mätäkuu(マタクー)

です。(原書=スウェーデン語ではなんというのかな? だれかおしえて)
このことに最初に気づいたのは、かな~~り前にとある本を読んでいるときだったんですが、何の本だったかなあ、『ムーミン童話の百科事典』かな?(ちがったらすみません)
その本では、前述の作品を解説する中で、

フィンランドでいう「腐れ月」は、正確には日本の「土用」とは期間がずれている

と説明しており、年齢ひとけた時代からの謎がすっととけた気がしたのでした。
そうか、土用と似たような時季のことを「土用」ってことばに置き換えてあったのか、と。(ちなみに上記に引用した邦訳書の初版は昭和43年です)

期間のことをいうと:
日本でいう夏の土用は、立秋前の18日間=おおむね7月20日ごろから。
対してフィンランド語でいうマタクー「腐れ月」は、7月23日~8月23日で、おおむね星占いの「しし座」の期間と合致する。

フィンランド語の「マタクー」ですが、 kuu クー は「月」のことですね。月の名前は全部、なんとかクーになっています。8月は elokuu エロクー。
で、mätä マタ(耳で聞くと、メテ、のほうが近いかもしれませんが)のほうは、「腐敗」という名詞であり、「腐った、いたんだ」という形容詞でもあります。
腐れ月は、上記の期間、夏のいちばん暑いころ、ということです。古い暦では実際に使われていたみたいです。ここ によると、「腐れ月」がフィンランドの暦(almanakka)から削除されたのは1996年なんだって。

フィン英辞書で mätäkuu をひくと dog days があてられています。Dog days も猛暑の期間という意味です。
なんで犬かというと、ここでいう犬ってのは星座の「おおいぬ座」のα星であるシリウス(英語では Dog star)のことだそうで、古代には、この星が明け方の空に輝くころがもっとも暑い時季とされていたから、って解説を見ることが多いです。
(語源についてたとえば ここ などに。シリウス→「犬の星」については ここ など)

しかし、なぜ「犬の日々」が北欧で「腐れ月」になったか? こちらのサイト(フィンランド語)によれば、「犬→腐敗」は誤訳がもとだったそうで。語源辞典(Nykysuomen etymologinen sanakirja)も見てみましたがやはりそう書いてあります。

低地ドイツ語で 「rodendage=犬の日々」だったのが、
デンマーク語に入るときに、
「rode 犬」と「roden 腐った」が取り違えられ、
そのままスウェーデン語、フィンランド語へ入ってきた

ってことみたい。
ふーん。おもしろいですよね、こういうの。
じっさい、ものが腐りやすい時季だしね。

さて。フィンランド語で 「腐れ月の話、ニュース」といえば、腐れ月のころに語られる、荒唐無稽の話、眉唾ものの話、「ありえねー」ニュース、という意味です。
フィン語Wikipediaの mätäkuuの項 を見ると、夏はこれといったニュースがない時季なので(みんな夏休みで出払ってるしね!)、その穴を埋めるために語られるネタ、ってなことが書かれている。
で、こういうニュースの例として、スコットランドの「ネッシー」、フィンランドの「ルオコラハティのライオン」が挙げられています。

ルオコラハティのライオン!
フィン関係者の中には覚えている方も多いでしょう。
1992年の夏にフィンランド全土を震撼させた(笑)、「フィンランド南東部ルオコラハティの森でライオンを見た!」という一連の騒動です。

まさしく92年の夏、わたしはフィンランドに滞在してました。たしかにこの「ライオン目撃騒動」、ずいぶん話題になってました。「ライオンの足跡」の写真が、新聞に載ってるのも見た記憶がある。
(足跡は複数あって、すくなくともそのいくつかは偽造だったことがあとでわかった。でも数あるライオン目撃情報のほとんどの真偽についてはいまだ不明。少なくとも最初の目撃だけは本当だったのでは、という説も→フィン語Wikipedia の Ruokolahden leijona の項などどうぞ)

それにしてもフィンランドって、特に南部はあれほど湖だらけなのに、ネッシーみたいな話が聞かれないのは不思議だ。冬が寒すぎてダメなの? でも1匹くらい、なんかいないのかな~? どなたか見かけたら教えてください。

まあ、そういうわけで、腐れ月にはどんなニュースがあっても不思議はないということらしいです。
どきどきしながら過ごしたいとおもいます。
「土用」が出てくる前述のお話で、ムーミントロールが絶滅したはずの「りゅう」をつかまえるのも、「腐れ月」だからこそ、なのかもしれませんね。

(2007.8.2 by mf)

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