ゾウとキツネ
アーサー・ビナード氏のエッセイ集『日本語ぽこりぽこり』を読んでいたら、「象の耳」というのが出てきた。
ビナード氏は米国出身・日本在住の詩人で、日本語で著作をものしているひとですね。
エッセイに書かれているのは、とある英語の詩のなかの
When the elephant's-ear in the park
Shrivelled in frost
というくだりを、日本語訳で
公園の象の耳が
霜でちぢまったとき
としている本があった、という話。
米国では、冬でも公園で象を放し飼いにしているのだろうか?
(夏ならいいのかという話もあるが)
いやいや。
ビナード氏によれば、英語で Elephant's-ear とは「大葉のベゴニア」のことなんだそうで。
霜の降りた公園で、象の耳がちぢこまっているのと、ベゴニアの葉っぱが萎びているのとでは、状況がだいぶ違いますねえ。
英語の「象の耳」で思い出したのは、フィンランド語の「キツネのパン」。
Ketunleipä("ケトゥンレイパ")は、直訳すれば「キツネのパン」なのだけど、
実は「象の耳」と同じように植物の名前で、
学名は Oxalis acetosella、
日本語では「コミヤマカタバミ」というのかな?
フィンランド語だけど写真がいくつか見られるページ→こちら
ハート型の葉っぱが、カタバミの仲間のしるし。花もかわいらしい。
この「キツネのパン」には、フィンランド語でもうひとつ別の呼び名もあって、それは「カッコウのキャベツ(käenkaali "カエンカーリ")」。
いずれにしても、森の生き物たちの食べ物に見立てられているところが、なんだか愛らしいなと思う。
ところが。
「キツネのパン」を、いつでも「コミヤマカタバミ」と変換すればすむかというと、そうはいかない。
フィンランド語の子ども向けの本を読んでいると、キツネのパン屋さんが、「キツネのパン」を焼いていたりする。
そのページの挿絵には、植物の「キツネのパン」を思わせる、ハート型をした緑色のパンが描かれていたりして。
ああ、もう、ほんとに、ことばってやつは。
『日本語ぽこりぽこり』、おすすめです。
アーサー・ビナード氏による「アーサーの日本語つれづれ草(web日本語)」はこちら
(mf)
偶然ですが、「かがくのとも」の最新号(2008年4月号)が、「ハートのはっぱ かたばみ」でした→こちら
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